エッセイ・つぶやき こむぎとの思い出や日常 犬のしぐさと気持ちのサイン 飼い主としてわたしらしく

雨あがりの匂いを嗅ぎにいく

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朝方まで降っていた雨がようやく止んで、空が少し明るくなってきた。
いつもより散歩に出るのが少し遅くなってしまったけれど、
こむぎは玄関先でずっと待っていた。

外に出ると、風がひんやりしていて、空気がいつもと違う。
雨のあとの地面や草のにおいが、少し濃くなっているように感じた。
それに気づいているのは、きっと私だけじゃない。

こむぎは、いつもより歩くペースがゆっくりで、
足元のあちこちを念入りに嗅ぎながら進んでいく。
とくに、公園の土の匂い、木の根元のあたり、
その場にしゃがみこむようにして、時間をかけて嗅いでいる。


雨があがったあとの世界は、
犬にとってはまったく別のものになっているんだろう。
水に濡れて、いつものにおいが混ざって、
見た目は同じでも、中身が違っているような、そんな感覚。

私は、そんなこむぎの様子をぼんやり眺めながら、
「犬って、散歩というより“確認作業”をしてるのかもな」
と思った。

何がどう変わったのか、誰が通ったのか、
自分の知っている道が、今朝はどんな表情をしているのか。
たしかめるように、鼻先を使っている。


おわりに

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こむぎにとっては、きっとにおいが“記憶の地図”になっているんだろう。
雨が降ると、その地図が少し書き変わる。
だからこそ、雨あがりには、いつもより丁寧にたどりなおす必要があるのかもしれない。

私は、濡れた地面を歩きながら、
そんな犬の世界を少しだけのぞかせてもらっているような気がした。

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